火星大接近に重ねる思い出

 今年は火星大接近の年にあたる。前回2003年には、「火星6万年ぶり大接近(雑誌ニュートン臨時増刊号)」などと言われ大騒動であった。前々回の火星大接近は1988年のことで、学生だった私は岐阜県の飛騨天文台で明るい火星を観察した。その時の65cm屈折望遠鏡は、それまでの私の人生で覗いた最大の天体望遠鏡で、巨大な望遠鏡を覗けたことが感激だった。その前、1971年の大接近は、私が意識して星空を見上げる3年前のことで、全く記憶にない。つまり、今年の火星大接近は私の人生で3度目のイベントということになる。

 火星の大接近は、規則正しく太陽の周りを回る地球と火星の運動において、火星が軌道上のどこで地球に追い越されるかで決まる。およそ15.6年で繰り返される現象である。しかし、それを目にする私たちは、その都度、人生の違うステージでそれを迎える。そして、繰り返し忘れた頃にやってくる大接近に思い出を振り返ることができる。

 火星大接近は、星空に目を向けることで容易に知ることができる。是非とも、次回、次々回の大接近の際に、夜空に明るく輝く火星を見上げて、今年の自分を振り返ってみたい。「この前の、火星大接近の時は周りにあんな人がいて、こんなことをしてたな。」と。